白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
(この先どうなってしまうのかしら)

 アイリとも引き離されてしまった。自分はこれから一体、どこへ連れて行かれると言うのだろう。

 でも尋ねたところで、どうせ教えてはもらえないに決まっている。騎士と話したいことだって特になかったし、それは彼にしても同様だろう。

「狭いですか」

 だから、その声が自分に向けられたものだと気がつかなかった。ロゼリエッタは目をしばたたかせ、緩慢な仕草で騎士を見やる。

 再び青緑色の目と視線が重なり、ロゼリエッタは咄嗟に俯いてしまう。

「狭いですか」

 もう一度同じ言葉で問いかけられ、ゆるゆると首を振った。

 久し振りに聞く声に涙が溢れそうになる。声色を変えたりすることもなく、ロゼリエッタの知るクロードの声だった。

「クロード様、なのでしょう……?」

 たまらずに疑問が口をつく。

 夜会でのスタンレー公爵の言及には明確な答えは示されなかった。けれど今なら、二人しかいない今なら答えてくれるかもしれない。

「あなたの婚約者だったクロード・グランハイムは隣国で亡くなっています。もう二度と帰ることはありません」

 その淡い希望もたやすく裏切られた。

 クロードの瞳と声で、騎士はクロードではないと否定する。

< 110 / 270 >

この作品をシェア

pagetop