白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
第六章
36. 辿り着く先
迷路さながらに複雑に入り組んだ道を、ダヴィッドだけを頼りに歩く。
途中、分岐路の壁にダヴィッドの目の高さ辺りの場所に様々な図形と数字とを組み合わせた目印が薄く刻まれていることに気がついた。けれど、そもそもの位置関係が分からないロゼリエッタには、何の手がかりにもならなかった。同じ道を通って先程までいた離宮に一人で戻るよう言われても無理だろう。
そうして進んで行くと、前方が行き止まりの道に出た。カンテラの灯りも届かない通路の奥は薄暗く、左右への曲道があるようにも見えない。
本当にこの道で大丈夫なのだろうか。
ロゼリエッタは進むしかできない。初めて心配からダヴィッドを見上げ、視線がその向こうの壁に止まった。王冠らしき絵と数字の五が並んで書かれている。王冠……つまり城内のどこかに出られるのかもしれない。
「大丈夫だよ、ロゼ。俺を信用して」
「もちろん信用しています」
穏やかなダヴィッドの声に答えれば、心細い気持ちは完全に吹き飛んだ。
いよいよ突き当たると、うっすらと四角い切れ込みが入っているのが分かった。
「少しの間カンテラを持っててくれるかな」
「は、はい」
「ありがとう」
ロゼリエッタにカンテラを渡し、ダヴィッドは壁に両の掌をつけた。影にならないよう気をつけながらその手元を照らすと、一瞬だけ視線が重なる。それからダヴィッドは小さく頷くと手に力を込めた。
途中、分岐路の壁にダヴィッドの目の高さ辺りの場所に様々な図形と数字とを組み合わせた目印が薄く刻まれていることに気がついた。けれど、そもそもの位置関係が分からないロゼリエッタには、何の手がかりにもならなかった。同じ道を通って先程までいた離宮に一人で戻るよう言われても無理だろう。
そうして進んで行くと、前方が行き止まりの道に出た。カンテラの灯りも届かない通路の奥は薄暗く、左右への曲道があるようにも見えない。
本当にこの道で大丈夫なのだろうか。
ロゼリエッタは進むしかできない。初めて心配からダヴィッドを見上げ、視線がその向こうの壁に止まった。王冠らしき絵と数字の五が並んで書かれている。王冠……つまり城内のどこかに出られるのかもしれない。
「大丈夫だよ、ロゼ。俺を信用して」
「もちろん信用しています」
穏やかなダヴィッドの声に答えれば、心細い気持ちは完全に吹き飛んだ。
いよいよ突き当たると、うっすらと四角い切れ込みが入っているのが分かった。
「少しの間カンテラを持っててくれるかな」
「は、はい」
「ありがとう」
ロゼリエッタにカンテラを渡し、ダヴィッドは壁に両の掌をつけた。影にならないよう気をつけながらその手元を照らすと、一瞬だけ視線が重なる。それからダヴィッドは小さく頷くと手に力を込めた。