白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
「どうか――最初は友人からはじめてくれてもいい。それでもいつか僕と結婚して下さい」

 クロードの声は、ロゼリエッタを強く渇望しているように聞こえた。

 愛して欲しい。そう、望んでも良いのだ。

 ロゼリエッタはクロードにしがみつき、頷いた。




 クロードの差し伸べた手に、自分のそれをそっと重ねる。

 優しく握り込まれたから強く握り返した。すると白詰草と四葉を編んで花冠を作るように指が絡んだ。

 これでもう簡単に離れたりしない。離したり、しない。

「私、クロード様と初めてお会いした時にお兄様と遊んでいたカードゲームを、いつかクロード様と遊びたいって思っていました」

 ささやかな憧れをクロードに伝える。

 ふと、兄の歯切れの悪い様子を思い出した。

 兄はもしかしたら、クロードが今日ここに来るのを知っていたのではないだろうか。クロードが振られてしまうかもしれないから、自分の結婚式には出ない可能性も考えていたのかもしれない。そんなことは、ありえないのだけど。

「でも、今度はお兄様と組みます。私と組むお兄様はきっと手強いから――頑張って倒して下さいませね」

「そのレオニールはとても手強そうだから、心してお相手するよ」

「ぜひ」

 妹の結婚相手になるクロードに、レオニールの手厳しい様が脳裏に浮かぶ。

 二人で無邪気に笑い合い、繋ぐ手に自然と力がこもった。

「ずっと、クロード様をお慕いしています」

「僕もずっと、君だけを想っているよ」

「たくさんお話しして、時々ちょっとケンカして、私はすぐ泣いてしまうと思います。そうしたら、抱きしめて下さい」

「うん。約束する」

 ロゼリエッタは耳まで赤らめ、鮮やかな夕焼けの下をクロードと共に家まで歩く。


 明日からはもう、彼の為に四葉は探さないだろう。

 代わりに自分がたくさんの幸せを与えられる存在であれば良い。

 そう、願った。




     

「白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる」 -END-

最後までお付き合いして下さってありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。

また、一言感想や感想などお気軽にいただけたら今後の創作活動の励みにもなりますし、とても嬉しく思います。

それでは、ご縁がありましたらまた別の作品でお会いしましょう。

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