冷徹弁護士の独占欲にママとベビーは抗えない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
櫂を抱いて窓際に立つ。
薄暗い空から今にも雨が落ちてきそうで憂鬱だ。

こんな日は、どうしても雨の日に逝ってしまった親父を思い出してしまう。

まだ四歳だったから記憶がおぼろげなところもあるが、リビングのテーブルで突っ伏したまま冷たくなっていた姿を忘れられない。

心筋梗塞で亡くなった親父を最初に見つけたのは俺なのだ。


ようやく泣き止んだ櫂を見て思う。

俺を育てるのも、こんなに大変だったのだろうか。

親父が亡くなったあと、もともと体の弱かったお袋もあっさり天国に旅立っていった。

『ごめんね。ひとりにしてごめんね』と涙を流しながら。


「守るからな。お前と七緒は、この命に替えても」


いや、命と引き替えではいけない。

残された者がどれだけ悲しいのか知っている俺は、「三人で幸せになろうな」と言い直した。
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