きみは溶けて、ここにいて【完】
森田君は、背を屈めて、土の上に人差し指を置いた。目線を落とすと、彼は、そこに、影という漢字を書いた。
その横に、よう、という平仮名の二文字を、人差し指で掘る。よ、う、と恐る恐る口に出したら、「保志さんも、影って呼んでやってほしい」と森田君が言う。
「森田君は、その、……影、君、と、友達なの?」
「うーん。なんていうんだろうな。同じ身体を所有している兄弟、みたいな感じかな」
「そう、なんだ」
「まあ、細かいことは、気にしないで」
そういうわけにもいかないよ、と思ったけれど、私はやっぱり頷くしかなかった。
足元の地面には、まだ、「影」の漢字が残っている。森田 影。森田君と同じ身体を所有している彼は、今どこにいるのだろうか。不思議な心地だった。
ほんの少し、不気味だとも思ってしまっていた。
「……具体的には、何をすればいいのかな」
「それは、保志さんと影で決めてほしい」
「そんな、」
一体どうすればいいのだろうか。どうしたら、その、もう一人の森田君、つまり、影君に会うことが出来るのかもわからない。