きみは溶けて、ここにいて【完】




「文子ちゃん、応援してくれる?」


 鮫島君が、あの子とすでにお別れしてくれていたらいいのに。久美ちゃんを好きになってくれたらいいのに。

だけど、そうしたらその陰で、絶対に悲しむ人がいる。恋って、嫌だ。ほとんどが犠牲を生む。地獄を、生む。



 友達のためだけに、ううん、違う、そんなに綺麗なものじゃなくて、友達が悲しむ顔を見て自分も悲しい気持ちになりたくないという理由だけで、人の別れを願う自分の醜さに辟易としながらも、うん、と、頑張って口角をあげて頷いた。




 その夜、影君に私は手紙を書いた。


最近、文房具店で新しく買ったルノワールの絵画が裏面にプリントされた便箋。


森田 影様、と、始めに名前を書く行為にもすっかりと慣れてしまった。


ゆっくりと、文字を並べていく。

答えられない質問をしてしまったことを謝る文章をまずは書いて、それから、影君からもらった手紙の二枚目に書かれていた質問に答えていく。

その間も、頭の中では、昼間の久美ちゃんのはにかむ表情がずっと浮かんでいた。



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