きみは溶けて、ここにいて【完】
久美ちゃんのことを考えていた。
心の距離を近づけることができないのに、近づけようとも思えないのに、それでも、私と仲良くしてくれる大切な女の子。
だから、本当は、自分が傷つくとか傷つかないとかそれ以前に、幸せでいてほしいと、ちゃんと思っている。
恋は、やっぱり怖い。
今も、また思い出して泣いていたら、と思うと、苦しかった。
鮫島君は、恋人と笑い合っているのだろうか。
だれかの不幸と幸せが重なる現象ばかりで、この世界はいっぱいで、それは、影君が手紙で書いていたような、感動的なものに涙する人たちが、平気で悪意を持てる事実と少し似ている気がしていた。
どれだけ薄暗い感情でジョウロを傾けても、そこから降る水は透明で、それだけが小さな救いだった。
水やりが花壇の半ばにさしかかったところで、不意に、ケラケラと笑い合う声が聞こえて、その声の方へ顔を向けてしまう。