きみは溶けて、ここにいて【完】
「……どういう、ことかな」
「そのまんまの意味」
「もうひとりの、おれ?」
「ん。そう、もう一人の俺」
「……森田君には、分身がいるの? えっと、昔、本で読んだことがあるかもしれない。臓器移植のためにつくられたそっくりさん」
あ、だめだ。話しすぎている。
今の言葉の中に、彼を傷つけてしまうような要素が含まれたいたら、どうしよう。口を噤んでも、もう遅い。
「ごめんなさい」と謝ったら、森田君は、「普通の反応だよ、そりゃ。俺も、保志さんだったら、信じられねーもん」と言った。
「でも、保志さんには、信じてもらえないと困るんだ」
「……じゃあ、しん、じる、よ」
本当は、全然、まだ信じられていないけれど、どうにも森田君が私をからかっているようには見えなくて、恐らく彼は本気なのだと思ったから、信じられない、とはもう言えなかった。
森田君は、再び花壇の淵に腰をおろして、自分の横を、とんとん、と叩く。
「まあ、保志さんも座って」と言われたので、周りに人がいないかを確認する。ただ、ディジーが咲いているだけで、人気はない。
私は、おずおずと彼の横に、人が一人はいるくらいの間をあけて座った。