きみは溶けて、ここにいて【完】
「影は、保志さんに会いたいよ。でも、俺がいるから、それがかなわない」
「………」
「俺と影のこと信じてくれて、影と仲良くしてくれてる保志さんにだから言えるけど、影ってさ、もうずっと、可哀想なんだ。生まれたときから、ずっと」
「そんなこと、」
言わないでほしい。
なんて、私が言うことではない。
言葉を最後まで吐き出す前に、踏みとどまれたことにほんの少し安堵しながら、首を微かに横へ振る。
「……森田君は、影君のこと、詳しいんだね」
「そりゃそうだろ。保志さんよりは、影のこと知ってるよ」
「もう一人の森田君、だもんね」
「影にとっては、俺も、そう」
「う、ん」
「互いに、隠すこと以外のほとんどを知っているし、感じてるから。……気持ち悪い?」
「まさか。……そんなこと、絶対にないよ」
むしろ、ほんの少しだけ、羨ましいと思ってしまった。
影君は、今、彼の身体の中でどうしているのだろうか。やっぱりそのことがすごく気になる。
眠っているの? いないということになるの?
部屋が入れ替わる感覚と似ていると言っていた。じゃあ、別の、部屋から、私と森田君が話しているのを感じているのだろうか。
どんな部屋? そこは、薄暗い? 影君であるとき、森田君もそこにいるの?
透明な疑問符が飛び散って、私は一つも捕まえることができないまま、俯いた。