きみは溶けて、ここにいて【完】





 森田君は、ふ、と息を吐き出すように笑い声を漏らして、「とにかく、鮫島のことは、保志さんが気にすることじゃないと思う」と言った。

そう言われても気にしてしまうものは気にしてしまうんだ、と思いながらも、頷く。




「あのさ、蝶のはばたきで、台風が起こるんだよ。バタフライ効果って言うんだけど、保志さん知ってる?」

「……一応、知ってるよ」

「蝶は、思わない。自分がはばたいたから、台風で、どこかの誰かが傷ついたなんて。キリがないから。逆に言えば、この世の中ってさ、全部繋がってるんだと思う。自分のせいじゃないことなんて、何もない。みんな、見逃してるんだよ。ちょっとずつ。見逃しても、いいんだと思う。影と保志さんはあれだよな。鈍さは、悪だと思ってるでしょ。二人のやりとり、知ってて、ごめん。でもさ、繊細でいすぎることは、偉そうだよ。影も、そういうタイプじゃん。いつも、自分が台風を起こした蝶だと思ってる。偉そうで、可哀想」



 軽い口調で、そんなことを言わないでほしいと思った。



 クラスの中心にいる人には、分からないだろう。


やっぱり、森田君は、影君に私が相談した内容を知っているのではないか。秘密にしてくれると言っていたのに。森田君が、勝手に感じ取ってしまったのだろうか。



 影君を疑ってしまう苦しい気持ちと、森田君の言葉が胸の脆い部分を揺すって、そこが罅割れる痛みが、別の次元で襲ってくるから、私はどちらにどの程度向き合えばいいのか分からなくて、「そう、だね。ごめんね」と、情けない返事をした。



「保志さん、今日の昼、自分のせいだって顔してたね」

「………森田君には、そう見えてしまったなら、ごめん」

「なんで、謝るの?」

「………申し訳ない、から」

「なにが? 俺に、保志さんが何をしたの?」

「…………」



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