きみは溶けて、ここにいて【完】
悲しむ、と言う声の余韻がなんだか重くて、森田君は影君のことを本当に大切に思ってるんだ、と感じる。
森田君が、「じゃあね」と言って、教室を出ていこうとする。
私は、慌てて、中庭から、「うん、じゃあね」と、その背中に声を返した。
姿勢のいい後ろ姿が、教室の外へと消える。
それで、ようやく血液がうまく回りだしてくれたような気がする。
今すぐ、猫背の彼に会いたいと、私は思った。
久美ちゃんは、次の日にはもう、前と同じように笑っていて、お昼休みもたくさん他愛もない話を聞かせてくれた。
時折、悲しそうにはするけれど、少しずつ回復しているみたいで、ホッとする。
だけど、ホッとして、心の平和を保てていたのも束の間のことで、また別の不安が私の中には生まれていた。
影君からの手紙が、一週間、届かなかったのだ。
窓を挟んで森田君と言葉を交わしたあの日から、森田君のほうに視線を向けることができなくなった。
怖いんだ。見透かされること。台風を恐れる蝶のように思われること。
教室の隅にいる私のことなんて、きっともう、森田君は考えていないだろうけど、どうしても、怖かった。