きみは溶けて、ここにいて【完】
サンドウィッチを頬彫りながら、周りを見渡す。この広場で夜になったら、キャンプファイヤーが行われる予定だ。その時に、私はこっそりと抜け出して、それで―――。
果たして、本当に、そんなことができるのだろうか。
わくわくする感情の背後にはつねに、不安が付きまとってくる。
それなのに、リスクを抱えてまで、何かをしようという気持ちになっているのは、相手も、本当はリスクを避けたい人であるのに、それでも、それを抱えたまま、自分に会いたいと言ってくれているということが分かっているからで。
影君とこっそりと会う。
当日になったら、萎んでしまうかと思っていたその勇気は、今も胸の中でしっかりと息をしていた。
「文子ちゃん」
「……うん?」
久美ちゃんの声に、慌てて意識を現実に戻す。久美ちゃんは唇をとがらせて、「なんか、文子ちゃん、ぼーっとしてる」と、少し不満げに言った。
束の間、久美ちゃんに嫌な思いをさせてしまったのだと思ったらと、すぐに申し訳ないと思う気持ちが膨らむ。
折角一緒にいてくれているのに、退屈させるなんて、だめだ。