きみは溶けて、ここにいて【完】
「でも、私の班、森田君とかいるし、楽しくはなりそう。いつも、周りに人がいて、あんまり近づけないじゃん」
「え、」
「ん、え、って何?」
思わず反応してしまったけれど、慌てて首を横に振る。
「なんでもない。……久美ちゃんが、楽しんでくれたらいいなと思って」
「なにそれー、いいひと。文子ちゃんも、楽しんでね」
うん、と笑って頷く。
気を抜いたらだめだ。
軽率から、一番遠いところにいたい。
森田君、という単語が出てきただけで、いちいち心臓を跳ねさせていたら、怪しまれてしまう気がした。
「それで思い出したけど、最近、里香ちゃん、森田君に告白したんだって。なんか、そういう噂聞いたんだよね。本人からじゃないけど」
広場は教室の何倍も広くて、普段ならば声を潜めてするような話も、普通の声量でできてしまう。
久美ちゃんがおにぎりを食べながら、何でもないことのように、そう言った。
里香ちゃんと聞いて、思い浮かぶのは、クラスメイトの島本里香さんのこと。お洒落なひとで、彼女も森田君と同じく、いつもみんなの真ん中にいるようなタイプだ。