きみは溶けて、ここにいて【完】




「……そう、なんだね」

「振られたって聞いた。なんか、気まずいよね。あそこ、同じグループって感じだし。森田君って、モテるのに、彼女作らないから不思議。とか言って、実は、いたりして」

「……どう、なんだろう。私は、そういうこと、何にも分からない、から」



 少しドキリとして、そのことに、すぐに恥ずかしさを覚えた。


あくまで、私は影君と仲良くしている。
私なんかが、ドキリとしてしまうのなんて、自意識過剰も甚だしい。



「でも、今日なんかもバスの中で、里香ちゃんと森田君、普通に話してたよね。私だったら無理かも。森田君ってみんなに同じ態度だし、気まずくならないようにするのかなあ。里香ちゃんも、そういうタイプだよね」


 今、森田君のことを久美ちゃんが話題にしているのもオリエンテーリングとカレー作りで同じ班になったからというだけであるし、彼女がいるのかどうかについても、私とは全く関係がない。

だけど、秘密を知っているから、なんだか、森田君の話をするのは危ない気がして。精一杯平常心を保ったまま、久美ちゃんの話に相槌を打つ。



「森田君って、人のこと好きになるのかなあ」

「……うん?」

「いや、なんかね、思うんだよね。鮫島君とかはさ、人のこと好きになる感じじゃん。クールだけど、きっとこの人は、他人を好きになれる人だなって、私、好きだったとき、思ってたよ。それって大事なことでしょう。文子ちゃん、そういうの分からない?」

「なんと、なく、分かる、かな」



 嘘。本当は、全然分からない。

みんな、人を好きになれるし、嫌いになれると思っている。

だって、みんな、傷つけあうことができるでしょう。傷つけあえるということは、嫌いになれるということで、それは同時に、好きにもなれるということだ。 



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