きみは溶けて、ここにいて【完】
遠くのほうに、森田君がいる。
その近くには、島本さんもいて、気まずさの気配など何もなかった。
「森田君は、そういう感じしないんだよね。そんなに親しくないし、あんまり話す機会もないから、なんとも言えないけど。みんな好きで、みんな好きじゃなくて、それで、平気って感じ。ザ・ムードメーカーだけど、なんだか、常に、色々わきまえてるよね」
久美ちゃんが、森田君のことをそんな風に思っていたなんて、今まで知らなかった。
久美ちゃんの言葉には、別に冷たさも温もりも感じなかった。ただ単純に、彼女がそう思っているだけなのだと分かる。
「そうだね」とあたりさわりのない返事をしたら、「まあ、どうでもいいけど」と久美ちゃんが笑って、森田君の話題はようやく終わった。
お昼ご飯を食べ終えたら、久美ちゃんとは別れて、オリエンテーリングで同じグループの人たちのところに向かった。
久美ちゃんにわざわざ言う必要はないと思って言わなかったけれど、私の班には、鮫島君がいた。あとは、クラスメイトの浜本さんと吉岡さんだ。
みんなクラスの中でも目立つ人たちで、変に緊張してしまう。何も嫌な思いをさせたくない、と、また弱気なことを思っていた。