きみは溶けて、ここにいて【完】
オリエンテーリングでは、森の中のいくつかのスポットを各班ごとにめぐる。
いたるところに数字がはりつけられた木が合って、そこに辿り着いたら、各班に一つ渡された数字の書かれたオリエンテーリング用のメモ用紙にチェックをいれていくのだ。散歩と、あまり変わらない。
メモ用紙と鉛筆をもって、三人の後ろをついていく。
浜本さんと吉岡さんは、二人で並んで歩きながら楽しそうにしていて、私の少し前には、鮫島君がいた。
彼は黙ったまま、時折、木や花を携帯のカメラで撮っていた。
他人を好きになれる人。
久美ちゃんは鮫島君のことをそう言ってた。久美ちゃんが好きだった男の子。後ろにいるのをいいことにじっと見てしまっていたら、不意に、鮫島君が振り向く。
不躾な視線を送っていたはずだ。「ごめんね」と、また咄嗟に謝ってしまう。
「え?」
「あの……鮫島君のこと、じっと見てしまっていたから。……写真好きなのかなって思って」
「ああ。いや、……彼女とそういう約束してたから。あとで撮った写真見せあおうって感じの、」
鮫島君の気まずそうな声に、居たたまれない気持ちになる。
そうなんだ、と、つまらない相槌を返したら、鮫島君は頷いて、再び前を向いて歩き出した。