Don't let me go, Prince!



「あ、の……弥生さん?私、何か勘違い……しちゃいましたか?」

 いつまで待っても弥生さんは何も言ってくれないので、私は不安になってしまう。
 だって電話の向こうで弥生さんが何を考えているのか、私にはさっぱり分からないんだもの。

「……いえ、勘違いなんかじゃありません。正直な話、渚さんがOKしてくれるとは思っていなかったので驚いてしまって。」

 ええ?弥生さんは女性に断られた事なんて無さそうなルックスの持ち主なのに?私がOKすることはそんなに驚くようなことなのかしら。
 弥生さんは断られると思っていたのに、どうして私を食事に誘ってくれたのだろう?聞きたいけれどまだ聞けるような雰囲気でもなくて。

「……じゃあ、本当に連れて行ってくれますか?」

 でも私もどうして少ししか会ったことのない弥生さんと、一緒に食事に行きたいと思ったのかしらね。
 上手く言えないけれど私は、弥生さんの事をもう少し知りたいなって思っているみたい。

「ええ。詳しい日時を決めてからメッセージを送ります。渚さんはいつが仕事は休みですか?」

 私の休み?弥生さんの方が忙しそうな仕事なのに私の休みに合わせてもらっていいの?

「火曜と土曜が休みです。出来れば土曜日だと嬉しい、です。」

 あの小児科は土曜は午前だけ診療だったはず。それならば……

「そうですか、分かりました。……では、遅くならないように休んでくださいね。おやすみなさい、渚さん。」

「え?ああ、おやすみなさい、弥生さん。」

 弥生さんは私の予定を聞くと、早く休むように言ってすぐに電話を切ってしまった。私はもう少し弥生さんと話したかったのだけど。

「やっぱり、弥生さんって分かんない……」

 スマホの画面に映った弥生さんの電話番号を見ながら、私はポツリとそう呟いた。


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