Don't let me go, Prince!


 弥生さんが指定した日、指定した時間に私は近くの駅で待っている。
 迷いに迷った服装は白のブラウスにグレーのカーティガン、そして紺のフレアスカート。
 出来るだけ弥生さんが好みそうな大人っぽく、落ち着いた感じのコーディネートにしたつもり。

 約束の時間ピッタリになっても、弥生さんは現れない。駅のどこかまで決めていなかったから、弥生さんは別の場所にいるのかも……
 このまま弥生さんが来るのを待つか、それとも私から探しに行こうか。バックからスマホを取り出して弥生さんの番号にかけてみる。
 何回かのコール音の後、聞きなれたアナウンスの声が聞こえてくる。

「こうなったら、探しに行ってみるしかないわね。」

 速足で駅の隅から隅まで見て回る。そんなに大きな駅じゃないから大した時間はかからない。
 ……でも、弥生さんの姿はどこにも見つからなかった。
 スマホにも出なくて、約束の場所にも来ていない。メッセージを送っても既読にすらならない。もしかして私、揶揄われたのかしら?それとも……

「事故……なんてことはないわよね?」

 身体がブルッと震える。なんてことを考えてしまったのかしら、そんなことあってほしくない。それだったら私が揶揄われていた方が100倍マシよ。
 弥生さんの事が心配で震える指でメッセージを打とうとした時、後ろから肩をポンとたたかれる。

「ひゃっ……や、弥生さん!」

「すみません、遅くなりました。」

 弥生さんの姿を見れて私はほっと息を吐く。けれど弥生さんはここまで走って来たのか、肩で息をしているよう。

「その、言い訳になってしまいますが、出る直前に知り合いに子供の具合を見て欲しいと頼まれて……そちらの子供を優先してしまいました。」

 申し訳なさそうに弥生さんは謝るけれど、私が弥生さんなら同じことをすると思うわ。


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