Don't let me go, Prince!
助手席のドアを閉めて弥生さんが運転席に乗り込む。ハンドルを握る彼の大きな手が素敵だなあって思った。
お互い無言のまま進みだす車のなか、私はチラリチラリと何度も運転する弥生さんの綺麗な横顔ばかりを覗いてしまう。
弥生さん何か喋ってくれないかしら、それとも私の方から話しかけた方がいい?
聞きたいことはたくさんあるのに、弥生さんにはどう話しかければいいのか悩んでしまうのよ。
「……知人が家族で経営しているレストランに予約を入れたんです。渚さんは好き嫌いありますか?」
「は、はい。私は好き嫌いは無いです。弥生さんは好き嫌いありますか?」
弥生さんから話しかけられて、会話を続けようと同じ事を彼にも尋ねてみた。だけど私の質問に、彼は答えてはくれず……
私の質問の内容が悪かったのかしら?ちょっとだけシュンとなる。
もうすこし話せると思ったんだけれどな……流れる景色を見ながら彼に話しかける言葉を探す。
「渚さんはどこの高校に行かれましたか?」
「高校……ですか?△△高校ですけど、それがどうかしましたか?」
「そうですか。ありがとうございました。」
弥生さんは一人で納得したように頷いている。ちょっと待ってよ、何を頷いているのかすごく気になるんだけれど。
「なんなんですか?気になるじゃないですか。弥生さん、教えてください。」
「安心したんです。貴女が《《思っていた通り》》の人だったから。」
思っていた通りの……?それは私が第一印象そのままだったということ?それとも弥生さんが言っているのは他の何かなのかしら。
「よく、意味が分からないんですけど……?」
「ええ、貴女に分からないように言っていますから。」