Don't let me go, Prince!


 弥生さんが私と同じ気持ちでいてくれるのはとても嬉しい。こうして彼と喜びも楽しみも共有出来るようになったのだと、あらためて実感することが出来るもの。

「弥生さんは私を幸せにするのが上手だわ……」

「渚だって、いつも私を幸せな気分にしてくれますよ?」

 本当に最近の私達は付き合いたてのカップルみたいに、胸焼けしそうなほど甘い時間ばかり過ごしている。

「もう、この話はおしまい。どちらも同じくらい相手を幸せにしたいと思っているはずだから。」

「そうですね。では渚の楽しみにしている駅弁でも……ほら、車内販売が来ますよ?」

 弥生さんがそう言うと、確かに車両の奥から車内販売の女性がワゴンを押してきている。だけれど……

「もう、そんな人を食いしん坊みたいに!」

 なんて拗ねて見せれば、慌てて「そういう意味では……」なんて焦っている弥生さんが可愛いの。
 本当は弥生さんの言う通り、私は食いしん坊なのにね。

「冗談よ、弥生さんもどれにするか一緒に決めましょう?」

 そう言って車内販売の女性に声をかけて、2人で駅弁を選んだ。少し早いお昼を食べて会話を楽しみながらの、のんびりした旅行。

 新幹線を降りた後は、2人で路線バスに乗り込む。旅館まで「タクシーで行きましょうか?」と弥生さんから言われたけれど、もっと旅行気分を味わうためにわざと路線バスを選んでみたの。

 「思ったよりも田舎だけれど、自然の綺麗な所ね。散策が楽しみだわ。」

 弥生さんも「そうですね」と頷いてくれる。弥生さんが選んでくれた露天風呂や食事も何もかもが楽しみでしょうがないの。


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