Don't let me go, Prince!
「自然豊かで凄く気持ちが良い!身体の中から、リフレッシュしている気分だわ。」
夕食まで時間があるのでさっそく散策しましょう、と誘われて2人で旅館近くの遊歩道へ。このあたりではおすすめのスポットらしく、ちらほら他の人も散歩している。
カップルや老夫婦、そして家族連れ……みんなこの自然に癒されているのでしょうね。
「春は桜、秋は紅葉がとても綺麗らしいですよ。次はその時期に来ましょうね。」
「ええ、楽しみにしているわ。」
当然のようにされる次の約束に、頬が緩みそうになる。きっと10年先も20年先も私達はうまくやっていけるはず。
軽く繋いだ弥生さんの大きな手は、前と変わらず冷たいけれど……もう、それも気にならない程、彼に触れた気がする。
「ママ―!」
突然下半身に後ろから抱きつかれて、驚いて振り向くとまだ幼い子供。私の顔を確認すると驚いた顔で離れて、周りをキョロキョロ。
もしかしてこの子、後ろ姿で私を母親と間違えたの?
「どうしたの?お母さんと離れちゃったの?」
私の問いかけにクシャリと顔を歪める男の子。はしゃいでいるうちに母親を見失ったのだろう。
「渚、私はこの子と一緒にいた女性を覚えています。探してきますから待っていてもらえますか?」
「ええ、お願い弥生さん。」
男の子の親の事は弥生さんに任せて、私は近くにあったベンチに男の子を座らせて話を聞いた。
男の子の名前は爽太君、今日は初めての旅行でここに来たらしい。なんでも明日は両親の結婚記念日らしく、そのことを嬉しそうに話してくれたの。
「そうなの、爽太君のお父さんとお母さんは凄く仲良しなのね。」