Don't let me go, Prince!


 震える手でパジャマの上着のボタンを留めて、ズボンを上げてみたけれど予想通りブカブカで。弥生さんは太ってるわけではないけれど、それなりに筋肉の付いた体つきをしているから……

 さっきの弥生さんの発言が無ければズボンは履かずに戻っていたかもしれないけれど、あの言葉を聞いた後ではそうはいかない。

 無意味に弥生さんを挑発するようなことは私には出来ない。私の行動で弥生さんに迷惑をかけてはいけないわ。

 それにしても、今更何故あんなことを私に言ってきたのだろう?

「今まで二人きりでも性的な意味では触れて来なかったのに……私に対する感情に変化でもあったのかしら?」

 弥生さんはやっぱり言葉が全然足りていないと思うわ。私を妻だというのなら、もっと妻としての自信を持たせて欲しい。

 遠回しな言葉で何を望んでいるのか暈さないで、あなた自身が私を必要なんだと言ってよ。言葉で……その冷たい指先で、貴方の奥にあるのかもしれない愛を私に伝えて____?

 腰を何回も巻いて、何とかずり落ちないようにして私は弥生さんの元に戻る。さっきの事で聞きたい事もあったし、このまま弥生さんを待たせるわけにもいかなかった。

「ねえ、弥生さん。私の無防備な姿というのはさっきの勝負とは別の話よね?それとも私が脱ぐことを本当は弥生さんが望んでなくて、欲なんて言葉を使って私を遠ざけようとしているの?」

 私がじっと弥生さんを見つめて聞くと、弥生さんは眉を少しだけ上げた。ああ、多分違ったんだわ。

「私は先程の言葉で、渚をそんな風に不安にさせていたんですね。私は渚を遠ざけようとなどしていません。遠ざけたい相手に自分を「男として意識しろ」なんて言いませんから。」

 弥生さんは右手で優しく私の頬に触れる。ほら、やっぱり冷たい指先……でもこの冷たさが一番気持ちいいの。

「私はシャワーを済ませてきます。先に休んでなさい、渚。」

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