Don't let me go, Prince!



 フッと目が覚めると見慣れない景色。キョロっと周りを見ると小さな窓から朝日が差し込んでいる。私が眠ったのはソファーのはずなのに、ここはどう見てもベッドの上。

「えっと……?」

 混乱する頭を一生懸命整理していく。そうよ、私は昨日弥生さんにこの部屋に連れて来られて……
 監禁なんて言葉は使いたくないけれど、ここから出してもらえないのは事実。

「渚、目が覚めましたか?」

 洗面所からピシっとスーツを着た弥生さんが歩いてくる。髪もすでに整えてあり、今付けたばかりなのか微かに整髪料の香りがする。

「ごめんなさい!一人でベッドを占領してしまったみたいで!」

 きっとソファーで眠ってしまった私を弥生さんがベッドまで運んでくれたのだろう。寝ている人間は重たいと聞くし、私は平均より背が高い。きっと……

「何故、渚がベッドを占領したと?」

「だって、私ど真ん中で寝てるじゃない?母や妹は私の寝相はとても悪いといつも言ってるくらいだもの。誰かとなんて寝れないわよ。弥生さんはソファーで寝たの?」

 そう……弥生さんは私が丸まって眠ってるなんて言っていたが、それだけではない。聞いた話では相当酷いらしいのだ。そのため妹も母も私とは一緒に寝たがらない。

 不思議なのはそれだけ寝相が悪くても、自分はベッドから落ちたことは無いという事かしらね?子供時代に一緒に寝た妹は、よく落とされたらしい。

「いいえ、私は渚にベッドを占領などされていませんよ?私は渚の隣で眠りましたから。」

 弥生さんは何事も無かったかのような顔で言ってるけれど……もしかして同じベッドで眠ったの?
 
「え、えぇ……?」

 こんな形で夫婦が一つのベッドで眠る日が来るなんて思ってもいなかったし、私にはこれっぽっちの記憶も残って無いんだけれど?

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