Don't let me go, Prince!



「何故そんなあからさまにガッカリするんです?渚は()が隣で眠ることがそんなに不満なのですか?」

「そうじゃなくって……」

 私がガッカリしたのは、どんな風に弥生さんが私の隣で眠りについたのを見れなかったことについてなのよ。結婚して半年、それでも私は貴方の寝顔すら見たことが無いの?見たいと思う事はいけない事なのかしら?

「渚、私はもう仕事に行く時間です。何か欲しいものがあったり、不便なことがあったらフロントに連絡しなさい。分かりましたね?」

「……はい。」

 ああ、いつもの無表情の弥生さんだわ。昨日は少しだけ彼の素顔を見せてくれたような気もしたけれど。本当に夢だったのかしらと思うくらいに元通り。

「19時には戻ります。渚、良い子で待っていてください。」

 そう言って弥生さんはドアを開けて出て行ってしまった。向こうからカチャリと鍵を閉められる音が聞こえて一気に心細くなる。

 なによ、良い子で待ってないって……私は子供じゃないわよ?
 大体19時には戻ってくるのはおかしくない?屋敷にいた時には弥生さんが帰ってくるのはいつも0時を過ぎていたのに。

 近くにあった枕をボスボスとベッドに叩きつけてストレス発散。ここなら早く帰って来るって、それじゃあまるで屋敷には帰りたくなくて今までは《《どこか》》で時間を潰していたみたいじゃないの!

 単に父親から貰った屋敷が嫌なのか、それとも私が寝ずに待っていたことが本当は迷惑だったのか。弥生さんの本心は分からない。

「大事な事ははぐらかしてばっかりじゃないのよ、弥生さんの馬鹿。」

 私は諦めてベッドから起き上がり洗面所へ。備え付けのカゴに真新しい女性の服が置いてあり、弥生さんが用意してくれたのだと分かる。

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