Don't let me go, Prince!



 そう……なのね。そこまで私が追い詰められている事に気づいていても、弥生さんはいつもと変わらない様子で接していたの?少しだけ悲しくなったけれど、彼がショックを受けたと聞いてどこか安心してしまった自分がいる。

「家政婦さんが、弥生さんに連絡をしたのね。弥生さんは分かっていたのならばどうしてショックだったの?貴方と私の時間なんてそれまであって無かった様な物でしょう?」

「昨日も話をしましたが……それは渚が今までの夫婦生活に持つ感想で、私視点のものではありません。渚にとってあって無いような結婚生活でも、私にとってはそうではなかったんです。」

 そう言えば、昨日彼は「私がそこで待つだけで、自分にとって夫婦生活は意味があるもの」と言ってくれたのだわ。彼にとって必要だったのは二人の時間ではなく別のものだったと?
 でも、私は二人の時間も、もっと欲しかったの。

「だからショックを受けたと?」

「後悔しました。自分に勇気がないばかりに渚を不安にさせて追い詰めてしまった事を。反省が遅すぎると渚に責められても文句は言えません。」

 弥生さんを責めたい訳ではないけれど、私の言い方でそう感じさせてしまっているのかしら?勇気が無かったのはお互い様よ。私だってこんな形でしか貴方の気を惹く事が出来なかった。

「どうして追いかけて来てくれたの?こんな堪え性の無い我が儘な妻なんて、放っておいても良かったでしょう?」

「渚がこの結婚生活を終わらせたくても、私はそうではないという事です。あの時のプロポーズも渚が思っている程、無感情で言ったものではないのです。」

 私との結婚生活をまだ望んでいるという事?それならば弥生さんにも変って欲しいと思うのは私の我が儘?私は今みたいに弥生さんと会話をして触れ合いたいの。
 それは、この場所でしか叶わない事なのかしら?

「そうなの?じゃあその時の感情を私に教えてよ、弥生さん。」


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