Don't let me go, Prince!



「……ん……いま、何時ぃ?」

 寝惚けた頭でいつも頭の上に置いている目覚まし時計を探そうとする。そう……いつも癖で置いてある時計を右手で探しきれなくて、また枕に顔を埋める。

 何かしら?紅茶のいい香りがするわ。うっすらと目を開けると、小さな窓からは朝日が差し込んでる。ああ、もう起きなくちゃ……

 そう思うのだけど、なんだか身体がやけに重い気がする。ぐっすり深く眠ったような気がしたのだけれど。

「渚、目が覚めましたか?」

 ベッドの向こうからソファーで新聞を読んでいる弥生さんから声を掛けられる。
 そうだわ、私は昨日弥生さんを挑発して……最後は弥生さんに良い様に何度も抱かれて、それはもう恥ずかしい姿を見せてしまったのよ。

 思い出して私は思わず俯いてしまう。とんでもなく厭らしい女だと思われていたらどうしよう……?

「渚、身体が辛いのですか?昨日は無理をさせてしまいすみませんでした。」

 弥生さんはソファーから立ち上がり、私の方へと寄ってくる。ま、まだ私は貴方の顔をちゃんと見る事が出来ないわ!

「私、シャワーを浴びて来ようかしらっ?」

「ああ、渚がいつでも入れるようにお風呂は準備しています。ゆっくり入ってくるといい。」

「そうさせてもらうわ、ありがとう弥生さん。」

 そう言ってベッドから降りて立ち上がろうとすると、何故かペタンとその場に尻もちをついてしまう。どうして足腰に力が入らない?

「大丈夫ですか、渚?」

「ええ、大丈夫。すぐに立ち上がるから、弥生さんは気にしないで?」


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