Don't let me go, Prince!
「あ……の、渚?これはいったい……?」
戸惑いながらも私の腰に腕を回した弥生さんが聞いてくる。ふふふ、弥生さんもそんな風に驚いたりもするのね。
屋敷ではずっと鉄仮面のような彼しか見る事が出来なかったのに、この場所で彼は分かり難いけれど見たことの無い表情を見せてくれる。
やはりここが一番弥生さんにとって自然体に近い状態でいられる場所って事なのかしら?
「ふふっ、甘え方を知らない弥生さんに私が上手な甘え方を教えてあげようと思って。」
私は弥生さんの頭を優しく撫でたあと、そっとその身体を抱きしめる。誰も貴方を甘やかしてくれなかったのならば、これから私が今までの分まで甘やかしてあげる。
「私は別に甘えたくなど……それに、これは子供に対するやり方なのではないのですか?」
「弥生さんの場合は子供の頃の分から必要なのかと思ったから……ね?悪くはないでしょう?」
私は弥生さんの子供時代をまだよく知らないけれど、きっと彼にはその頃から周りの人から受け取るものが足りて無かったのだと思う。
だから……全部あなたに教えてあげたい。《《私》》が弥生さんに教えてあげたい。
「そう、ですね。悪くはありませんが……ただ、渚は私が大人の男だという事を忘れすぎです。」
「どういう意味?」
私は弥生さんの事をちゃんと大人の人だと分かっているわよ?
聞き返した瞬間に腰に回された腕の力を強められて、私は弥生さんから離れる事が出来ない。
「渚から私に触れたのが悪いんですよ?私がどんな気持ちで貴女と二人きりで過ごしているのか知りもしないで。」
「ちょ、ちょっと待って?一度腕を離して、弥生さん。」