Don't let me go, Prince!
私が素直に言う事を聞くと、弥生さんはゆっくりとした動作で私の隣に腰掛けてそっと私の肩を抱き寄せた。
「渚、私も貴女に少しだけ甘えていいですか?」
「もちろんよ、好きなだけどうぞ?」
そう答えると弥生さんは私の肩に、コテンと頭を乗せてきた。
弥生さんから甘えたいなんて言ってくれるなんて、私は嬉しくてこのまま弥生さんをギュッと抱きしめてあげたい気分になってしまう。
サラサラな弥生さんの黒髪が……首元に当たってくすぐったいけれど我慢。
「弥生さん、貴方が私に甘えてくれて嬉しいわ。何か甘えたくなるような事があったの?」
彼の後頭部に手を伸ばしてそっと撫でてあげる。いつもと逆だけれどコレも悪くないんじゃないかしら?
「……少しだけ。だから今は渚の温もりに触れて癒されていたいんです。」
内容までは教えてくれないようだけれど、今日の出かけた先で何か嫌なことがあったのかもしれない。
心配だけど、まだ私は深く聞く事が出来ない。
しばらくそのままで過ごして、酔いがある程度冷めてから私はゆっくりお風呂に入った。
もしかしていつも入浴剤を選んで用意してくれているのは弥生さんなのかしら?今日の入浴剤は花びらまで浮いていてすごくお洒落……
私は彼の為に時間をかけて身体を磨き、丁寧にスキンケアをした。触れた時に少しでも彼が喜んでくれるように、と。
交代でお風呂に入った後は夕食。毎日ホテルが用意してくれているものだけれど、ここの食事は結構美味しい。
弥生さんは先に食べ終わると、少し考えた素振りをした後真剣な表情で私に話を始めた。
「今日人に会う予定で○○市まで行ってきたのですが、待っているといった相手が急な仕事で会えなくなり話が思うように進まなかったんです。それで少し落ち込んでいました。」