(仮)愛人契約はじめました
 この聞いても仕方がないことをスルーする能力は、月子が言うように、母から受け継がれたものなのかもしれない。

 常に忙しく働いていた母は、蓮形寺の奥様になってもその癖が抜けず、ビシバシ効率的に動く人だった。

 その野性味あふれる感じが奥様方の間で受けていたようだったが。

「どうやって頼めばいいんですの?」

 レジ前で月子が落ち着かなげにあちこち見ながら訊いてくる。

「月子、苦手なもの、そんなにないよね?」

「お姉さまの作ったものなら、なんでも食べれましたわ。
 でも、お店で出てくるものとかは……」

「じゃあ、いいよね。
 すみません」
と唯由がさっさとアップルパイと飲み物を二人分頼むと、

「お姉さまには、人の話を聞く能力とかありませんのっ?」
と月子が横からわめいてくる。
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