猫を拾った
「ねぇ、どうしたのそんなに急いで」


「いいから早く、時間が無い」


「服って...どこにいくの?」


「なるべく、出かける時みたいに」



そう言われたので、ショートパンツにパーカー。
10代のうちだけだと思っていたショートパンツ。

多分きっと、これで10代最後だ。



「貴重品...これに入れて、財布とスマホとか」



可愛らしい白のショルダーバッグ。

それにスマホと財布、通帳、学生証を入れる。

貴重品といえば、この程度しかない。



「準備できた?行くよ」



彼女はとても焦ったまま、私の手を引く。
黒のスニーカーを履いて、部屋を出る。

エレベーターに入って、少し息を吐く。

降りる間にと、彼女は話し出した。



「いい、これからあなたは帰る」


「え?」


「こんなところにいたら...私みたいになる」


「優里さんみたいに...って?」


「サッポロについたら、誰か頼れる人のところに行くの。それで、今までのことを話して」



これはここの住所だから、そう言って渡された1枚のメモ。
それをスマホケースに挟む。

そして、エレベーターが開いた。
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