御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
だから私は安心しきっていた。でもビジネス婚だからこそ合わなければリストラもあり得るだろう。

「私と一緒だとこれから嫌な事が沢山出てくるでしょう。それに翼が黙っているとは思いません。副社長、いや、社長になるべく、きっとまた何かを仕掛けてくると思います。もちろん全力でお守りしますが、万が一があるかもしれません」

そう語る玲音は寂し気だった。

「はぁ、良かったです。そんなことなら私はこの契約続けたいです」

玲音は不安そうに私を見ている。

「そんなことと言いますが、通常のビジネス契約とは異なります。世継ぎ問題で精神的に参ってしまうかもしれません。パーティーの時のように美音さんが強姦に合う恐れもあります。育ちの違いで奥様達から陰険ないじめを受けるかもしれません」

「私からの契約破棄を希望されているのですか?」

「契約破棄? そんなこと私は望んでおりません。でも心配なのです。美音さんが……」

彼はこねているパン生地をぎゅっと握りつぶした。

「何故そこまで私を心配してくれるんですか?」

「それは……咲羽玲音という会社では社員を大切にすることを第一の理念に据えましたので」

つまり玲音は私を大切にすることを一番に考えているという事だろうか。
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