御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「私は他人と敬語なしで話すのは苦手です」

「私達は他人ではありません。少なくとも日本の法律上来週には夫婦になります。でも、いいです。苦手なものは強要しません」

「ありがとうございます。私はそういう美音さんが好きです」

ん? 今さらっと好きって言った?

「好きって言うのはあれですよね? 邪魔にならないとかいう意味で人として好きってことですよね?」

「どうしたんですか? いきなり」

「だって人を好きになれないって言っていた玲音さんから好きなんて言葉が出たら確認が必要でしょう」

「意味合いの確認作業、大切ですね。人として好きだという意味です。ただし、この感情は美音さん以外に感じたことがありません。優しくされたり、私の利になる事をしてもらったりした時の感謝の気持ちとは異なります」

益々分からなくなってきた。

でも満足そうに言う玲音にこれ以上聞くことはできなかった。

どんな好きでもいい。言葉じゃない。玲音の行動そのものを私は信じよう。

あぁ、私はまた人を信じようとしている。

お母さん、いいのかな、これで。

私は胸元のダイヤをぎゅっと握り締めた。

「汚れちゃいますよ」

彼は濡れたタオルで私の手を拭いて、私をゆっくりと抱きしめてくれた。
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