御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
結婚式当日、特注のウェディングドレスを着て、控室で待っていると、ドアがノックされた。

「はい」

「いよいよですね」とドアの外から玲音の声がしてきた。

「先ほど婚姻届けを提出したとの報告がありました。これで夫婦です」

婚姻届けは白木さんに提出しに行ってもらった。白木さんにも結婚式に出てもらいたいのでそうしてもらったのだ。

「ありがとう。これからもよろしくお願いします。ってかなんで入って来ないの?」

「それは、ジンクスがあるからです」

式より前に新郎は新婦のウェディングドレス姿を見ない方がいいというあれだろう。意外とこういうのは守るらしい。

でも守るってことは別れたくないという意思表示のようにも感じられる。

「結婚式が終ったらその足で各地のホテルを回ります。せっかくのハネムーンなのにすみません」

ハネムーンは挨拶も兼ね、各地、各国のホテルのスイートルームに泊まる事になっている。

主要都市に行けるのだから私としてはありがたい。それに各国ではそれぞれ1週間の滞在で偵察と言う名の周辺の国々のホテルを回る。

彼にとっては仕事だが、私にとってはただの観光だ。
それに今日まで学んできた写真や動画でしか見られなかった土地に足を踏み入れられる貴重な経験なのだ。

「謝らないで。私は凄く嬉しいよ」
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