御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
高校を卒業してから英語に触れる機会もなかったので凄く助かった。

だが案内役が試験官という大手ならではの大掛かりな採用試験という元から仕組まれたことだったのだろうか。

じゃあここは同僚ともすぐに打ち解けられるコミュニケーション力を発揮しようじゃないか。

「今日は晴れて良かったですね。散歩日和です。咲羽さんは散歩お好きですか?」

「散歩なんて時間の無駄です」

彼はキーボードを打ちながらそう言った。

言葉は乱暴だが忙しそうな彼に話しかけた私が悪いのだ。

空気が読めるというところも見せてやろうじゃないか。

私は彼の邪魔をしないように単行本を取り出し、たまに車窓を眺めながら小説を読み進めた。

小腹が空くとマカロンを小分けしていたフリーザーバッグをリュックの中から取り出した。

信子にフリーザーバッグは色々と重宝すると言われ持って来ていた。早速役に立っている。

フリーザーバッグの封を開けると美味しそうな香りが私を包み込んだ。

3つあるうちのピンクのマカロンを取り出し、一口食べた。

ふわっと口の中に優しくストロベリーが広がる。

「美味しいですよ! 咲羽さんも食べますか?」

「結構です」

美味しさに感動して彼がマカロンを食べないという事を忘れていた。

彼は、私の隣で忙しなくタイピングしたり、画面上の何かにペンで書き込みをしたりしながら仕事をしている。

こんなに忙しい人が試験官なんて人使いの荒い会社なのだろう。心して挑まねば。
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