御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「……どうしたんですか?」

彼は私をまじまじと見ながら尋ねてきた。

ドレスが似合う顔でも身体でもない。

似合わないことは予想していたが、ほぼ能面な彼の眉間にここまで皺を刻ませることになるとは思ってもいなかった。

「えっと、似合いませんよね」

「はい。そのメイクはいただけません。彼女には後できつく注意しておきます。お化粧直されますか?」

遠慮のない一言だが、彼の眉間の皺の原因がメイクだという事にほっとし、自然と笑顔になった。

「いいえ。そんな、大丈夫です。フランス人っぽくしてくれたので今日はこれでもいいですか?」

「神岡さんがよろしければいいでしょう。では参ります」

彼は腕をくの字に曲げて私が手を添えるのを待っているようだ。
私は軽く彼の腕に手を添えて慣れない高いヒールに苦戦しながらも宮殿のようなレストランに足を踏み入れた。

周りのお客さんは気品あふれる人ばかりで自分だけが浮いている感が否めないが、席に案内されて座ると無言の彼とも居心地の良い空間だという事に気が付いた。

それに、窓の外にはエッフェル塔が見える。

「窓側の席を予約していたのですが、昨日のことを考えてこちらの席に変更しましたが窓側がよろしかったでしょうか?」

あまりに私が窓の外を凝視していたために彼は心配になったのだろう。
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