御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
彼は完璧な営業スマイルで彼女にフランス語で話し、おばさんは驚いた顔をしながら最後は大笑いしていた。

きっと私が英語も分からずにずっと相槌をしていたことをばらしたのだろう。

彼はいくつかパンを購入すると「では行きますよ。予約の時間に間に合いません」と言って私の手を取って店を出た。

私は彼に引かれながら彼女に会釈し、手を振ってバイバイと言った。

彼女は「チャオ」と軽やかに言い、投げキッスをしてきた。

フランス人。とても素敵だなと思いながら彼に言われるがままタクシーに乗り込んだ。

彼がタクシーの運転手と何度かやり取りすると先ほど買ったパンの紙袋をタクシー運転手に渡した。
運転手は嬉しそうに受け取り、車を運転し始め、ルーブル美術館の前で止まった。

そういえば、他に行きたいところが無いか聞かれた時にモナリザ見てみたいと人事の人に伝えた気がする。

「さぁ、降りてください」

彼に急かされるままタクシーを降り、ルーブル美術館を案内された。
一般とは違う場所から入ったのでおそらく何か裏で手を回していたのだろう。

たった一人の将来の社員になるはずだった人の為にそこまでするとは一体どこまで社員を大切にする会社なのだろうか。
< 51 / 129 >

この作品をシェア

pagetop