御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
それにしても確かに私はモナリザが見たいと言ったがほとんどの展示をすっ飛ばしてモナリザを見せてくれと言ったつもりはない。

目の前のモナリザと目を合わせながら人の流れに沿って移動する。ずっと私を見てくれるモナリザ。

モナリザ、あなたも謎ですが、私も今、この現状が謎過ぎて堪りません。

あっという間に私の初ルーブル美術館体験は終わりをつげ、庭園を30分ほど歩いてコンコルド広場に立ち寄った。

会話は全くない。

彼は会社の人間として、人として最後まで誠意を尽くそうとしているのだろうか。

気まずい雰囲気を何とかしようと噴水を前に私はようやく口を開いた。

「大きな噴水ですね。ここですよね。コイン投げるで有名なところ」

私は小銭入れから投げ入れるコインを選んでいた。

「コイン?」

「はい、映画の、ほら、あの有名な綺麗な昔の大女優さんが出ている映画で髪を切って」

暫くの沈黙の後、彼は「もしかして、オードリーヘップバーンですか?」と言った。

「そうです。その人です!」

「あれはスペイン広場にあるトレビの泉ですよ」

「トレビの泉でしたか。スペインなんですね」

とんだ恥さらし。

これでヨーロッパを一色単にしていることを知られてしまっただろう。
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