御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「明日の帰国便は私も同じ便に致しました。そのまま私の実家に向かい挨拶していただきます」

ん? 何を言っているんだ?

「母に連絡したところすぐに会いたいと言って聞かないもので」

「え? あの、どういう意味ですか? 挨拶って何ですか?」

「ですから、結婚の挨拶です」

そうだった。
私は採用取り消しになることばかり考えていてすっかり忘れていたが、彼は責任の取り方として結婚を提案してきたのだった。

子供ができていたなら確かに先に結婚したい意思を伝えた方が世間一般的に考えてもよいだろうが、そもそも子供ができているかも分からないし、愛し合てってもいない私達が結婚なんてできるはずがない。

「あの、その考えから一度離れていただけますか?」

「と申しますと?」と彼はきょとんとした顔になった。

能面がきょとん。これはこれでツボだ。

「ですから、子供ができたかどうかも分かりませんし、できたからといって結婚しなければならいない法律はありません。それに結婚は好きな人とするべきだと思いますよ」

「はぁ……。ですが、責任を取らねばなりません」

私が彼の言葉に目をぱちぱちさせると、彼は再び口を動かし始めた。
< 54 / 129 >

この作品をシェア

pagetop