ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「小嶺さんは、一番後ろの席ね」と三上先生が、窓側の席を指差した。
 私が歩くと、みんなの目が追いかけてくる。ずっと見られるのって、なんだか慣れない。

 席へ着くと、みんなが視線を外してひそひそと話し出す。すごく嫌な雰囲気だ。

 落ちかけていた顔が、ふと上がった。となりの席に、さらさらの銀髪をした男子が座っている。

 うわぁ……、キレイな横顔。
 ガラス玉みたいな赤茶色の瞳に、線で描いたようなスッとした鼻。吸い込まれそうな白い肌。とても同じ人間とは思えない。
 そのたたずまいは、ひときわ異様なオーラを放っていた。

 となりの席だし、挨拶くらいしておいた方が良いかな。

「あの、よろしくね」

 目で返事をするかのように、その男子はちらりとこちらを見てすぐ視線をそらした。

 もしかして、無視された?
 すとんと前を向いて、ごくりと喉を鳴らす。これは、先が思いやられそうだ。

 生物の授業が始まった。学校側の不手際で、まだ教科書が届いていなかったため、となりの彼に見せてもらう事になった。

「血液の中には、ヘモグロビンと呼ばれるタンパク質があります。ヘモグロビンの真ん中には炭素、窒素、水素でできたポルフィリンリングがあって……」

 机をくっ付けた真ん中に置いてくれるのはありがたいけど、ずっと外を向いたままで、彼は1度もこっちを見ない。完全に私を避けている。

 私が何をしたっていうのよ。
 気になって、先生の言葉なんて全く耳に入ってこない。

 これから、こんな学校生活が繰り返されるかと思うと先行き不安だ。
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