ブラッド★プリンス〜吸血鬼と女神の秘密〜
「名前、なんて言うの?」

 距離が近いことを逆手に取り、思い切って話しかけた。初めに見えない壁を作ってしまったら、余計に出遅れちゃうから。

 すると、1度も見ようとしなかった彼が振り向いた。きらきらした瞳と、ぱちりと目が合う。

 その瞬間、ビリリと電気が走ったように動けなくなった。

「……ルキ」

 整った唇が小さく動く。心臓が早くなって、息が苦しい。
 この感じは、なんだろう。
 なんだか、ものすごくーー。

 ふいっと目が逸れると、しびれるような感覚が和らいでいく。変なの。私、どうしちゃったんだろう。

「目の色、すごくキレイだね。ルキくんは、元からこの辺りに住んでるの?」

 会話を続けるために、わざと質問を飛ばす。せっかく名前を教えてくれたのだから、このチャンスを逃したくない。

「……ずっと前に、帰ってきた」

 前を向いたまま、ルキくんが答えた。表情ひとつ変えないで、笑いもしない。

「じゃあ、ルキくんも転校生なの?」
「……さあ」

 それからずっと窓の外を向いて、話してくれなくなった。気に障ったことでも聞いちゃったのかな。

 終わりの音楽が鳴ると、ルキくんは立ち上がって教室を出ていった。

「何あれ」

 ムッと頬を膨れさせて、ノートを閉じる。
 転校生は最初が肝心なのに、露骨に避けなくても良いじゃない。
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