悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
目に飛び込んできたのは、歩いてくる〝高貴な令嬢〟ミッシェルの姿だった。後ろには二人の侍女を連れていて、恐らくこれから宰相のところに行くのだろう。

私の、マイ・推し……っ!

アメリアは、一気に体温が急上昇するのを感じた。じっと見つめてくる彼女に気づいて、男装姿であることに途端に恥じらいを覚えた。

「ぇと、あのっ、これはその」

「その格好は『白薔薇の会』かい? 一体何が――」

こちらへと向かってくるミッシェルが、エリオットの存在に気づいた。何やら思い至った様子で、微笑ましげな表情を浮かべる。

「ふふっ、どうやら私の懸念だったようだね。仲良くやっているようで、何よりだよ」

誤解されてしまった。

この男装姿と、何をどう結び付けられたのかは知らない。けれど二人きりだったという状況を思えば、なんとなく婚約関係であろうとは分かった。

「違うんですっ、私は――うきゃっ!?」

不意にエリオットに抱きしめられて、アメリアの続く声は彼の胸板でくぐもった。その体温に包まれているのを感じた途端、心臓が大きくはねた。

なんで私、彼に抱き締められてるの!?

どうして、なぜ、と頭の中が一気に騒ぎ出す。かぁっと恥じらいが込み上げて押し返たら、それをさせない力強さで彼に抱き込まれた。

自分とは違う、たくましい体付きと高い体温。後頭部を包み込む大きな手は、とても男らしくて大きい。

< 117 / 230 >

この作品をシェア

pagetop