悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
だが言葉は続かなかった。演奏音と人混みで気づかなかったのだろうか、エリオットが振り返ってきて手を取り直し、アメリアの腰を抱き寄せた。

「踊ろう、アメリア」

近くから、彼の紺色の瞳に見つめられて息が止まった。その目の中に、ちょっとびっくりしたような自分の姿が映っている。

「――はい、殿下」

どうしてか、気づいた時にはアメリアはそう答えていて、知らず知らず彼の手を握り返し、エリオットと踊り始めていた。

曲に合わせて、エリオットがリードした。装飾品をちりばめたアメリアのドレスの裾が、一部下ろされているチェリーピンクの髪と一緒に優雅に舞うたび、二人の美しさに周りの者達が目を向けていく。

エリオットの踊る姿は、まさになっている。

さすがはゲームのメインヒーロー、といったところだろうか。アメリアは次第に落ち着いてきて、ステップが単調になったところでそう思った。

「意外とうまいな」

「まぁ、お兄様がよく付き合ってくださっていましたから……」

それでも、触れられている部分から伝わってくるエリオットの体温には、全く慣れないでいる。アメリアは、こっそり恥じらった。

すると、気づかないでいるエリオットが、納得したような表情をする。

「確かに。あの男の普段の様子からすると、毎日でも付き合いそうだ」

その時、一曲目が終わった。

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