悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
ようやくか。このダンスの終了を思って緊張を解こうとしたアメリアは、そのまま彼が次のステップを踏むのに気づいて「えっ」と驚いた。

間奏はすぐに終わって、二曲目が始まってしまった。今度は、優雅な曲調でゆったりとしたリズムの演奏が会場内に流れる。

――ゲームでは、確か、一回だけ踊って終わりだった気がする。

アメリアは、エリオットをこっそり見上げた。ターンするためにその方向を見ている彼の横顔は、涼しげだ。

ダンスを続けているのは、ヒロインに出会っていないせい? 本来であれば、ここで彼は、ヒロインとの仲を深めて恋を自覚していくはずだったし……。

先程、自分をここへ連れて来た際の、不機嫌な様子が思い返された。ゲームの原作を思い返すと彼の機嫌は悪いだろうと分かって、アメリアは言った。

「あの、殿下。きちんとしたお相手様ができたのなら、すぐに破棄してくれて構いませんからね……?」

その瞬間、ジロリと睨まれた。

「何がだ?」

分かっているのに、なぜわざわざ訊き返すのだろうか?

途端に不機嫌さをあらわにした彼を見て、それでも尚、離す気がない様子でダンスを続けているのをアメリアは不思議に思った。

「あの、だから、私との婚約のことですよ」

彼がターンをする。そのまま深く引き寄せられて腰を支えられ、アメリアはエリオットと近くから目が合った。

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