悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
尋ねれば、気のせいか握っている手と、アメリアの腰を抱いて支えているエリオットの腕が強くなる。

「ここで離したら、ダンスの誘いが殺到するぞ」

「あははは、まっさか~」

笑って答えた途端、正面からガツンと見つめられた。

しまった、令嬢がそんな風に笑うものではなかった。気づいたアメリアは、どうにかしなければと慌てると、にこっと控えめな作り笑いを浮かべてみせた。

「計算高いと思っていたが、ただ素直なのか」

ふうん、と呟いた彼が次のステップを踏む。そのダンスの流れでぎゅっと引き寄せられて。アメリアは少し恥じらいながら答える。

「私は、別に素直ではないです」

「自己アピールしたい令嬢なら、そう自分からは言わない」

正直に答えるところではなかったらしい。アメリアは指摘されたことに恥ずかしさを覚えて、かぁっとなってしまった顔を伏せた。

エリオットが、一層密着するダンスの姿勢を取り、そんなアメリアを一心に覗き込んだ。

「――どうしてかな。今日は、お前を独り占めしたい気分だ」

多分、それはヒロインと出会っていないせいじゃないですかね……。

アメリアは、彼の方には本日、メインの予定がないのを思い出した。少し暇を持て余しているらしい現状から、そう推測する。

でも、こちらとしては免疫がないので、いちいち顔を近づけるのも無しにして頂きたい。

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