悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
月明かりでも花弁がよく見えるものであるらしい。

隣を歩くクラークの説明を聞いて、アメリアは庭園を進みながら理解する。

「夜の鑑賞。なるほどね、確かにムードが出る気はするわ」

「お前が言うと、途端にロマンもなくなるのが残念です」

なんでだよ。この人、本当遠慮がないな……アメリアは、自分も一人の乙女なんだけどと思ったりした。

だが、会話は続かなかった。

適当に勘で進んだのだが、向こうにミッシェルの姿が見えたのだ。推しへの愛が導いたに違いないと、アメリアはドレスを両手で持ってクラークと共に走る。

できるだけ音を立てないように気をつけ、ミッシェルの姿を拝められる通路脇の庭園の茂みで、二人はしゃがみ込んで身を隠した。

こっそりとそちらを覗いてみると、ベンチに座って、月を眺めて一休みしているミッシェルがいた。

「はぁ……。なんて美しいのかしら」

「同感です」

アメリアはうっとりとした顔で、クラークは真顔で、それぞれ鼻血をこらえてガン見した。

月光に照らし出されたミッシェルは、まさに女神のごとく美しさだった。上品なドレスはキラキラと反射していて、背中に流されたままの銀髪も銀糸のようだ。

「ドレス姿が、とっても素敵だわ」

思わず、熱い吐息がアメリアの口からこぼれる。隣の美貌の近衛騎士隊長クラークと、肩がくっついていることに羞恥はない。

< 142 / 230 >

この作品をシェア

pagetop