悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
けれど見つめていると、やはりミッシェルは元気がないようだった。

ただ、ぼんやりと夜空の月を眺めている。その表情は、美しさもあって神秘的であるものの、彼女自身はただただどこか物憂げな気がした。

一体、何を思っているのだろう?

まるで人目から逃れるように、一人でこんなところに……アメリアは、そんな彼女を思って「ミッシェル様……」と胸を押さえてしまう。

その時、どこからか草を踏む足音が聞こえた。不意に耳に入ってびっくりしたアメリアの口を、そちらへ目を走らせたクラークが押さえて「しっ」と言う。

「気配からすると、不届き者ではなさそうです。様子を見てみましょう」

確かに、何か分かることがあるかもしれない。アメリアは、意外と大きくて男性らしい手をしたクラークに、こくこくと頷き返してみせた。

互いに身を寄せ合って、そちらを注視して息を潜めて待った。

すると、カサリ、と音を立てて庭園通路から出て来たのは、第一王子のマティウスだった。

月光に照らし出された彼のダークブラウンの髪が、夜風に揺れる。ふと、彼が驚いたように薄い紺色の目を少し丸くした。

気づいたミッシェルが、その湖のようなしっとりとした目を見開いく。

「こんばんは、ミッシェル嬢。まさか、こんなに早い時間に先客がいるとは思わなくて」

「いえ、わたくしこそ、先にお休みを頂いて申し訳ございません」

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