悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
絵になる二人だ。その場には、いい感じの雰囲気が漂っている感じがあった。まるで夜風すら、温かく二人を優しく包み込んでいるかのようだった。

こっそり見つめているアメリアは、なんだかその空気感にそわそわした。そばにいるクラークの密着具合が、今更のように少し気になり出す。

「殿下こそ、踊らないのですか?」

ふと、ミッシェルが問いかけた。

庭園と、夜空の風景を眺めていたマティウスが振り返る。彼女はにこっと控えめな微笑を返すと、言葉を続けた。

「私が参加した中で、踊っていらっしゃる光景はほとんど見ないので。相手も王妃様か、従姉妹の公爵令嬢ヴァレンティーナ様くらいかと」

するとマティウスが、ほんの申し分程度の微笑を口元に浮かべた。

「私も、そういう気分ではなくて」

そう答えた彼が、静かな表情をたたえたまま夜空を見やる。

「私が言うのもなんですが、殿下と踊ってみたい令嬢は、たくさんいらっしゃいます。受けてくだされば、きっと皆お喜びになるでしょう」

「そうだろうね。でも……本当に踊ってみたいと思う者は、その中にはいなくて」

独り言のような呟きを落としたマティウスが、ハッとした。不思議そうにしているミッシェルに気づくと、空気を変えるように慌ててこう言った。

「たとえばっ、君が僕と踊ってくれるのなら、とても嬉しいのだけれど……なぁんて」

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