悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
取られた手を包み込まれて、どこか真剣に告げられてアメリアはドキッとした。エリオットがまるで大切そうに名前を呼んできたから。

見つめられていることに緊張が増して、こくこくと頷いたら、彼が真面目な様子のままアメリアの手を握って口元へと運んだ。

「いいね? 約束だよ」

そのまま、握り込んだ指先に口づけられた。

サロン内から「ひゃあ」やら「ひゅー」やら「素敵っ」やらといった黄色い声が上がる。何をやっても絵になる第二王子(メインヒーロー)だからだろう。

アメリアも、迂闊にも言葉が出ないほど真っ赤になってしまっていた。エリオットはそれに満足して「それではまた」と言い残して去っていく。

――そもそも私、ドキッて何よ!

周りからの視線に遅れて気づいたアメリアは、頬の火照りをさましがてら足早に歩き出した。

今はあんなエリオットだって、ゲームのヒロインと会えば変わるだろう。そうしたら『白紙にしてくれ』なんて言っていた癖に、アメリアに平気で婚約破棄をお願いしてくるのだ。

そう考えたら、どうしてが胸が苦しくなった。

ふと、サロンから少し離れられたところで思い出した。そういえば、そのゲームのヒロインであるソフィア・ハーバーは、今、どうしているだろう?



――アメリアは、彼女があのワンコ系攻略キャラルートを進んで〝ふわふわハッピーエンド〟に、着々と向かっているのを知らないでいた。


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