悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
エリオットの口からこぼれた言葉に、思わず周りで見守っていた者達から「まぁ」と、うっとりした声が上がる。

さすがはメインヒーローだ。ゲーム画面で見ていたような紳士的な口調で愛を囁かれたアメリアは、顔が熱くなった。

「あ、あの、殿下。私はたいした娘ではないのです」

思わず視線を落としたら、手をきゅっと握られてしまう。

「そんな謙虚なところも、とても好ましい」

背を屈めた彼に、顔を覗き込まれて心臓がばくばくした。気のせいか、告げる彼の声がとても甘く聞こえてしまうのだ。

「アメリア、こっちを見て」

「み、見られません」

「なら、こうしよう」

「え? ――あっ」

不意に、彼の方へ引き寄せられて顎に指を添えられたかと思ったら、アメリアはエリオットに口付けられていた。

おぉ!と周囲から黄色い歓声が飛んだ。惜しむかのように唇を愛撫され、余韻を残してエリオットの唇がアメリアから離れる。

「なっ、なななな何をするんですか!」

真っ赤な顔になって抗議した。キスは禁止って言ったじゃないのと、アメリアは涙目で思う。

「あまりにも美しいから、他の虫が寄らないように見せつけてやった」

――ただただ我慢できなかっただけ、とは素直に言わず、エリオットは意味深に唇をぺろりと舐めた。

生々しいから、そこで唇を舐めないでっ!

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