悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~
そう戸惑っていると、エリオットが頭から手を離した。いまだ閲覧が続く人々の賑わいの中、アメリアの髪をするりとすくい取る。

「お前がずっと望んでいたことだから、今は我慢してやる。――が、これが終わったら俺だけを見てもらう」

そのまま髪にキスをされて、アメリアは心臓が大きくはねた。ドキドキしてしまって、踊るミッシェルのことも少し頭の中から飛んだ。

おかしい。この胸の高鳴りは、推しだけのはずだったのに。

アメリアは、体温が一気に上がるのを感じた。目の前にいるエリオットが、どうしてかとても素敵に見えて視線をそらせない。

「なんだ、ミッシェル嬢達の方を見なくてもいいのか?」

ふと、察したエリオットが、とても嬉しそうな顔でにっこりと微笑んだ。

「ふぇっ? あ、み、見ますとも!」

「ふふふ、そうかそうか」

「ちょ、殿下、抱擁するのはなしですっ」

「『殿下』ではなく、エリオット、と」

言いながら、顎を固定されて上を向かされ、アメリアはエリオットに頬へちゅっと口付けられた。

「ひぇっ、雰囲気が甘い!」

羨ましげな令嬢達の羨望と、夫人達から温かい眼差しを向けられているとも気づかず、アメリアはたじたじになって言った。

その時、唐突にわっと声が上がって、音楽が小さくなった。

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